kei 「蜘蛛の糸Ⅱ」

2023年3月退職 後の生と死を「絵と言葉」で考えたい…4月からは「画家」か?「肩書を持たないただの人間」として生活していこうと考えています。

「二枚の岩窟の聖母」

盛期ルネサンスの巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチ
万能の天才。見た目も、物腰も、知識も天下一品。
ついでに菜食主義者で食べられる運命にあった鳥を
空に逃がしたとか…

絵を描きながら、その途中でいろんな研究にのめり込むため、
寡作(完成作は10数点と言われている)の作家としても有名である。


なのに「岩窟の聖母」という作品はなぜか2枚存在する。


一方はフランス ルーヴル美術館

もう一方はイギリス、ロンドン・ナショナルギャラリー

詳しい話はWikiを参照されたし。

ともかくも現代の研究者によって、
どちらもレオナルドの真筆という結果が出たらしい。

 う~む。匂う・・・

 以前はルーヴル版が本物で、
ロンドン・ナショナルギャラリー版(以降ロンドン版と呼称)は弟子の作。
といわれていたことがあった。(私も、これを調べるまでそう思っていた)

ところが近年ロンドン版は洗浄され、
仔細に調べられてほとんどがレオナルドの筆である。
ということになったらしい
描かれた順序はルーヴル版が先で(1483年~1486年)
ロンドン版は(1495年~1508年)となっている。

でも…
ロンドン版はルーヴル版と比べて比較にならぬほど質が低い

歳をとり下手になったのか?

いいや 彼の晩年の傑作「聖アンナと聖母子」1508年頃制作

彼の絵は美術的・技術的視点のみならず、自然科学、解剖学、発想
…ともかくなんでもかんでも どんな点から見ても深く、そして正確であり
絵のどの部分を見ても驚嘆に値する。
それがレオナルド・ダ・ヴィンチという作家

「岩窟の聖母」に話を戻すとルーヴル版は
スフマート技法(透明色を何度も重ね、ぼやかして描く手法)
を用いているが、ロンドン版にはそれがなく固い。
人物の表情もルーヴル版のほうが一層神秘的で美しい。
ルーヴル版の草花は繊細にして優美である。
それに比べてロンドン版はお花が咲いてて派手だが、
テキトーさが漂っている。

ともかく、仮にロンドン版が彼の真筆だとしても、、、

やる気なさすぎである。

そしてなにより、

光輪が描かれているのが気にかかる。

(これは後に別の画家が描き加えた。という説もあるが)


レオナルド・ダ・ヴィンチという作家は
「受胎告知」等初期の作品には光輪を描き込んだものがあるが
年を重ねるに従いその表現は消えていく
それは「最後の晩餐」でも同様で、
一点透視図法という図法によってイエス=キリストがその人である
と表現している。

ルーブルの岩窟の聖母には何故光輪が描かれていないのか」

ルネッサンス芸術の重要な役目」は
「神と人の合一」であり「峻別」ではない
「神と人」を 0でも1でもある クォークのように捉えているのだと思う

その点では同時代のもう一人の歴史的天才
ミケランジェロ・ブオーナローティーもその領域にいたと思われる

私は評論家ではないし
専門知識もそれほどあるわけではないのだけれど
2枚の絵は違いすぎる

まあ・・おそらく発注元は2枚目の「光輪付き 派手なロンドン版」に
満足したから買い取ったのだと思いますが…それを見てレオナルドは「バーカ」
と きっとほくそ笑んだことでしょう。(´・ω・`)

 

kei