kei 「蜘蛛の糸Ⅱ」

2023年3月退職 後の生と死を「絵と言葉」で考えたい…4月からは「画家」か?「肩書を持たないただの人間」として生活していこうと考えています。

「亡き王女のためのパヴァーヌ」

葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」を見て、印象派の音楽家ドヴュッシーが「海」を作曲したのは どうやら噂らしい…

だが同じ印象派ラヴェルが作曲した「亡き王女のためのパヴァーヌ」は絵から着想を得ている

その画家はディエゴ・ベラスケス

その画力はレオナルド・ダ・ヴィンチを超え 今現在まで最高と言えると思う

17世紀スペインで活躍し 一介の画家から貴族にまで上り詰めた

法王イノケンティウス10世

絵画を超え 当人の内面まで肉薄しているこの名画は ずっと後の画家フランシス・ベーコンにまで影響を与え マネは「画家の中の画家」と諸手を挙げて絶賛している 

1623年スペインの宮廷画家となったベラスケスは1人の王女の成長を絵描き続ける 王女の名は「マルガリータ

世界の絵画評論家が最高傑作と評する「ラス・メニーナス」を含め 成長していく姿を描き続けた

だが当時のスペイン王家「ハプスブルグ家」は「高貴なる青い血」を守るために近親婚を繰り返し マルガリータの近親係数は親子間、兄弟間の数値の4倍だった そのため5代で王家は途絶える

長い顎が特徴の子の王家 最後の王カルロス2世は知的にも問題を抱え 口元が閉じられずいつも涎を垂らしていた その姉がマルガリータだった 

8歳のマルガリータの肖像

ザクザクと荒い筆で描かれているように見えるが 怖ろしいほどの描写力である

2年後画家は61歳の生涯を閉じるが「一体何を考えて 何を感じながらこの絵を描いたのだろう」と私は思う

ハプスブルグ家に生まれ 血の呪いを受け いずれは叔父である神聖ローマ皇帝に嫁いでいく 16歳で嫁入りしたが 6人産んだ子の中で20歳まで到達したのは1人だった そして彼女自身も度重なる出産で衰弱し 21歳の生涯を閉じる

 

ベラスケスなら そんな彼女の未来が透けて見えていたのかもと思う

そんな思考が頭をよぎる 

6人も立て続けに出産したのは「世継ぎ」を遺すためだったろう…

 

1899年 200数十年を超えて 一人の作曲家がマルガリータ肖像画の数々を見ながら生み出したこの曲はよく似合っていると私は感じる


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