kei 「蜘蛛の糸Ⅱ」

2023年3月退職 後の生と死を「絵と言葉」で考えたい…4月からは「画家」か?「肩書を持たないただの人間」として生活していこうと考えています。

「モナ・リザ」

2019年03月31日記事

以前 レオナルド・ダヴィンチに触れた記事を書いたがほとんど読まれなかった(´・ω・)

ついこの間「画家 フェルメール 真珠の耳飾りの女」について触れたが

「絵は結局見る者の好き好き」とか「優劣などない」という物言いもあるが

美術評論的な視点からだと「そりゃ違う」ということになると思う

フェルメールの絵とレオナルドの絵では「次元が違う」というほどの差がある

ということは フェルメールがレオナルドを凌駕しているというダリの見解は彼独自の判断だと思う

これは言わずと知れた「モナ・リザ」だが 縦77cm横53cm(盗難の際に切り取られた)

の小さな絵 wikiで調べればいろいろ情報は出てくるだろうし 盗難に遭い両脇の柱が無くなってしまったことで 却って「名声」を高めたとも言われているが 私の理解としては

この絵はレオナルドにとって いわゆる「名刺」として用いられたのだろうと思う

「私は発明や医学等にも通じているが 絵も描ける」ということを示すために

死地となるフランスまで持って回った


フェルメールが透視図法 色彩 光 等に執着し具象として美しい作品を描いたのは確かだが

レオナルドの凝り様はそれどころではない 自然 科学 宗教 解剖学 美 人間そのもの

あらゆる観点に執着し それをこれ以上ないほどに完璧に結実させた絵がモナ・リザ

通常の画家の何十倍の凝り方で描かれている

 

世界の美術評論家100人で選んだ「最高の絵画」として フェルメールと同時期の

バロック期の作家ディエゴ・ベラスケスの「ラス・メニーナス(侍女たち)」が選ばれた

私から言わせると ベラスケスは名作を描く作家というよりも「史上最も上手い画家」

だと思われ(描いている自画像を含め鏡の中に両親を描き込むなど巧妙な名作だが)

「セビーリァの水売り」という
初期の作品からでもそれは感じ取ることができる ツボから滴る水の表現 ガラスの質感 緻密で恐ろしいほどリアルである

後期はザクッとした筆遣いに変わっていくが それが逆に上手さを引き立てることになる

「王女マルゲリータ
スペイン王家の伝統である近親婚によって生まれ 21歳の生涯を閉じた王女マルゲリータ

この「亡き王女のパヴァーヌ」のモデルとなった彼女の衣装の質感 手に持っている毛皮

適当に描かれているようだが 離れてみれば見るほど そのリアリティに驚く


・・・と レオナルドより上手い画家は100年ほど遅れて出てくるわけだけれども

「深さ・凄み」という点においてはレオナルドには及ばなかったと思われる


これも2年ほど前に紹介したが 生涯で10数点しか完成させることができなかった

レオナルドだが なぜか「岩窟の聖母」だけは2枚ある

一作はルーブル美術館

もう一作は ロンドン・ナショナルギャラリーに保存されている

現代の専門家の判断ではどちらもレオナルドの真筆とされているらしいが

私としては疑わしい…

この同じ題材 ほぼ同じ構図の2枚の絵は 天と地ほどの違いがある

先のルーブルのほうを100点満点とするなら ロンドンのは10点 10分の1以下の出来に見えてしまう

というか ロンドンの絵はレオナルド・ダヴィンチの精神・思想を全く反映していない

レオナルドが興味を持つのは 人物の表現によって神聖の高みまでもっていくことであって 頭に輪をつけてごまかすことではない

周囲の草花も同様で ルーブルのは 生えている地質 その花の葉の1枚1枚のつき方まで 調べつくして描いているのがわかる 背景もまた同様である

つまりは 自然科学 解剖学 美学 植物学 鉱物学 絵画 ありとあらゆるフィルターを 通じて描かれるのがレオナルドの絵であり 前者の絵にはそれが反映され

後者の絵には 適当さ どうでもよさ臭が画面を覆いつくしている

なぜ2枚目が作られたのかは明白で 教会から イエスに光輪がついていないとか

十字架がないとか 色彩が鮮やかでないとか バカな理由からだと思われ 

後に描かれた適当な2枚目の方にさぞ満足したことだろう

ミケランジェロの「最後の審判」に裸身はマズイと 他の画家が描いた「猿股」ほどに 愚かである

そういえば

ミケランジェロもイエスの頭に光輪を描かなかった

レオナルドにとっては自然科学や美学等etcが最優先事項であり

ミケランジェロにとっては「人間そのもの」が最優先だった

ラファエロ・サンツィオを含め3大天才と呼ばれるが 先の2人と比較した場合

「そつのなさ」ゆえにラファエロは 数段も格下だというのが私の判断である


今回は絵画 それも具象画限定なのでレオナルドについて勝手に書いたが

「多方面に及ぶ異常なまでの凝りよう」「飽くことなき探求・追及の精神」という点において レオナルド・ダヴィンチを超える画家は今なお見たことがない


こうして言葉で語ると つまらないかもしれないが「モナ・リザ」 という

たった1枚の絵にそれが具現化されていることを考えれば

先入観を持たずとも 「世界最高の絵画」という名にふさわしいと考えられる

kei