kei 「蜘蛛の糸Ⅱ」

2023年3月退職 後の生と死を「絵と言葉」で考えたい…4月からは「画家」か?「肩書を持たないただの人間」として生活していこうと考えています。

「りんご」

    

               きみはだいすきなりんごをたべて

    のこったたねをおうちの裏の庭にうめました

 

 

    たねは芽をだし 樹になって

    7本の枝がのび 7つの花が散ったあと

    7つのりんごがなりました

    でも そのうちのひとつのりんごは空の色したりんご

 

 

    きみは空色りんごの実をたべて

    そのたねを広い草原にうめました

    樹はすくすくのびて 花が咲き

    また7つ 空色りんごがなったはず

    ううん ひとつのりんごは黄色だった

 

 

    黄色いりんごはすっぱくて

    おかあさんになったきみは こどもをだいて

    たねをうめに森にいきました

    樹はゆっくり静かにのびて

    森の中で 7つのりんごがなりました

    そうしてうまれた ひとつのりんごはうす紫

 

 

    きみはうす紫のりんごのたねを

    夜 海のそばにうめました

    風に吹かれつづけたその樹には

    たくさん薄紫のりんごがなったけど

    ひとつは 夜空で輝く黄金だった

 

 

    黄金のたねを

    きみはだいて 見知らぬ土地へいきました

    そうして

    曲がったままもどらぬ腰で

    ゆっくり埋めた

 

 

    だれにも知られず樹はのびて

    そうして実ったのは

    6つの赤いりんご

 

    ひとつたりない。

                  - そうでは なくて

 

    ちゃんとなってた 見えないりんごが

 

    それじゃ誰にもわからない。

                  - けど ちがう

 

     きみには見えてた

 

    透明な体で腕を伸ばして 

    透明なりんごを両手で包んで

    座りごこちよさそうな 小さな雲の上で

    きみはまるかじりしていた

 

 

 

 

娘がまだ幼稚園に通っていた頃でしょうか ジュニアパイロットで一人で

長崎の祖母の地に行きました 那覇空港で帰りを待つ間 することもないので

こんな詩を考えていました いつか「絵本」にしようと思いながら

20年以上過ぎても作っていません