kei 「蜘蛛の糸Ⅱ」

2023年3月退職 後の生と死を「絵と言葉」で考えたい…4月からは「画家」か?「肩書を持たないただの人間」として生活していこうと考えています。

松籟

   「 しょうらい」と読む 私は谷川俊太郎の詩からこの言葉を知った 「鳥羽」と題された一連の詩は 何もない 希望も 直観も失った「カラ」の自分の物語

鳥羽10

~略~

書きかけて忘れてしまった一行を
思い出したい
一語すら惜しみ
私は言葉の受肉を待ちうける

眼を射る逆光
途絶えぬ松籟
どんな粉本もない

泉鏡花他 多くの作家がこの言葉を用いている 松の間を吹き抜ける風はインスピレーションと関わっているようにみえる

 

現代作家として台頭してきたのか エリック・ヘイズという画家

この絵を見たとき「やられた」と思った 自分と似ている感性を持つ者だとわかる でも先に視覚化されてしまった 後の祭りである

今の私にはインスピレーションも一片の言葉もない

無風状態 教師のアルバイトも内情を知っているせいか 手が伸びない

吉岡実の詩の一片のように「押し石一つが欲しいよ」だけなのかもしれない

私の中のエンジンは眠っている 眠りながらあがく 手っ取り早く写真を撮る

 

 

 

私には 幸福も不幸もない

朝 水は凍えるほど冷たかった 水に触れながら北朝鮮の人々の生活を思った

不幸であるわけがない

ならば 「カラ」である自分も 幸福でも不幸でもない

松籟が吹けば歩みだす その時言葉は後から 吃音のように響く

 

kei