kei 「蜘蛛の糸Ⅱ」

2023年3月退職 後の生と死を「絵と言葉」で考えたい…4月からは「画家」か?「肩書を持たないただの人間」として生活していこうと考えています。

『個人が精確な部品として働く有機的な機械組織』

アニメ「PSYCHO-PASS」で引用された人物の言葉

総監督として務めた「本広克行」は「踊る大捜査線」の原作者であるが 無類のアニメ好きでもあり この作品を作り上げた 引用される語り手は寺山修司から P.Kディック ルソー スウィフト シェイクスピア等様々で 本広氏の読書の幅の広さを窺い知ることができる

そして表題となった言葉を語る人物は「マックス・ヴェーバー」(1864年4月21日 - 1920年6月14日)ドイツの社会学者、政治学者、経済史・経済学者(新歴史学派)である 

私はこの人のことを知らなかった

劇中ではこのように引用されている

「理想的な官僚とは 憤怒も不公平もなく さらに憎しみも激情もなく 愛も熱狂もなく ただひたすらに義務に従う人間のこと」 ここで「官僚」という語句が出てくるが「事業者を例外とした雇用者全般」のことを指している そう考えると「イタい言葉」だ そしてこうも言っている

「管理的行政は知識によって大衆を支配する 専門知識と実務知識 そしてそれを秘密にすることで優越性を高める」 政府は当然として 企業だろうが学校だろうが…よくある話

 

このような2つのセリフが AI社会の基盤「シビュラシステム」に真っ向から対立し いくら残忍な殺人を行っても サイコパス数値が悪化しない 免罪体質者「槙島聖護」によって語られる

再びウェーバーの言っていることをまとめると このようになるらしい

マックス・ウェーバーの構想する合理的な近代化のプロセスは、経済活動を 『資本主義化』 させていき、行政をはじめとする大組織を 『官僚制化』 していくが、M.ウェーバーの語る官僚制は 『個人が精確な部品として働く有機的な機械組織』 である。 M.ウェーバーは近代社会に特徴的な行政組織の官僚制化と産業経済の機械化が結合することによって、生産力の飛躍的な拡大を図ることができるとしたが、それと同時に個人の自由意思は抑圧されやすくなり、人間が組織・機械・生産体制に従属させられる悲観的な未来像を思い描いてもいた。

あらま。現代そのままでねっか…

 

というか本広氏は先に挙げた人々の著書を読み PSYCHO-PASSの土台を作り上げていったのだと思う 私が興味関心を感じたのは「アニメ」というわけではない 本広氏の思考である 実際 氏が監修しなくなった「PSYCHO-PASSⅡ」は一作目よりも生温いし 切れ味に欠く Ⅲに至っては観てすらいない

 

シビュラシステムによって統治されることで 世界で唯一の平和な国となり 他国とは物流・情報・人の出入りは完全に閉ざされ鎖国状態の未来日本 食料は無人となった北陸地方で生産される ハイパー小麦(?)だったか(遺伝子組み換えによってとんでもない収穫量を誇る)それを原材料にして 人口肉 人口ご飯 人口野菜 人口スイーツが作られる 当然人口はドッサリ減っており 国民は都市に99%居住していると思われる

「シンギュラリティ(技術的特異点)」が30年以内にやってくると噂されている 人類にとって 量子型コンピューターが生まれつつある現代にとって この作品は益々リアリティを帯びていくことになる

ただ全話通じて感じることは「余りにも平和ボケしているのか 人々はボンヤリした表情の仏のようで『喜怒哀楽』から遠く離れた顔つき」をしており これが果たして「生きてる人間か?」とつくづく感じてしまうのだ

ウェーバーの言う通り これはユートピアではなく「ディストピア」なのだろう

kei