kei 「蜘蛛の糸Ⅱ」

2023年3月退職 後の生と死を「絵と言葉」で考えたい…4月からは「画家」か?「肩書を持たないただの人間」として生活していこうと考えています。

「真名」 アーシュラ・K・ル=グウィン

wikiで調べたら アメリカ在住のこの作家が2018年に亡くなっていたことを知りました。1929年生まれなので ご高齢であったことは知っていましたが…

この女流作家を知ったのは「闇の左手」というSF作品によってでした

成人すると 女になったり 男になったり 性別が変わる特殊な惑星の物語

髭を生やした惑星の王が「女性化」することで 物語は動き始め 歪んでいき 最後は悲しい結末だったことを覚えています

この作品とほぼ同時期の1968年頃 児童文学作品を作り上げました

 

アースシーの物語 通り名としては「ゲド戦記

 

2001年まで5作書き継がれた ル.グインのライフワークと呼べるこの作品は 文句なしの傑作だと私は感じています

宮崎駿」がこの作品に憧れ 常に枕元に置き 折あらば開いて読んだということですから1980年 宮崎は勇敢にもル.グインに連絡し「是非ともあなたの作品をアニメ映画にしたい」と頼み込んだのですが 当時ル.グインは大家 一方の宮崎は東方の名も知れぬアニメ監督だったので 彼女は断りました

でも彼女は「となりのトトロ」等宮崎作品を何作も見続けており 宮崎に「貴方は天才だ。ぜひ私の作品を映画化してほしい」と逆に頼み込みました

ところが当時宮崎は別の作品に取りかかっていたので 息子の吾郎が監督となって2005年に発表されました 私も当然観に行き「愕然」としました その余りの出来の悪さ というより「ゲド戦記」の物語を適当に継ぎ剥いだだけの その真髄とは似ても似つかぬ駄作でした 当然父の駿もル.グイン自身も とても落胆し「残念だった」と感想を述べています 映画を観た後「オレに創らせろ!コンニャロー。」と口に出したほど 私も「ゲド戦記」の愛読者でした

 

あ。えと…ここまでは前置きなんです。話は第一作 ゲド戦記影との戦い」の話

(ここから原作を読まず 拙い記憶を掘り起こし 書くので間違いがありそうですが)

 

ゴンド島という有名な魔法使いを多く輩出した小さな島に住む ハイタカというあだ名の少年 赤黒い肌をし 天性の魔法の才を持っています 島を占領しに来た多数の軍を「霧の魔法」で混乱させ 撃退するほどの力 それを偶々目にした大魔法使いが自らの弟子にし 寡黙で過酷な修行を与え続けます 魔法で悪行を為さぬことなど… そして修行を終えた後 アースシーのなかでひときわ大きな島にある「魔法学院」に入学できるよう推薦状を書くのですが その時少年に「決して誰にも教えてはならぬ。この名を知られてしまうと他の魔法使いから呪いをかけられたり 操られてしまう。草や樹 風や海に「真なる名前」があり それを諳んじることで魔法が使えるように そなたにも真名を与える 『ゲド』と」

ゲドはこうして中央の魔法学院に転入することになりました

親しく接してくれる者も数名いましたが 貴族ヅラの「学園でNo1の魔法使い学生」には事ある毎にツッカカられ イヤミを言われ続けながら学んでいきます ですがゲドの才は周囲から見ても驚くべきもので 周囲に認知されていきます そして学園の祭りの夜 イヤミなライバルはゲドに勝負を挑みます

「ただの魔法勝負じゃつまらない。そうだ”呼び出しの魔法で勝負しよう”」とライバルは言い ゲドは受諾します

ライバルが何を呼び出したかは私も忘れてしまいましたが ゲドはとんでもないモノを呼び出そうとします それは実在したのか しなかったのかさえ 今となっては分からない太古の「魔の女王」エルファーランを呼び出すというのです その名を口ずさみながら杖を回すゲド 中空に光のモヤが出来たかと思うとエルファーランのシルエットが浮かび上がります たしかその時多くの者も見守っていたのでしょう 呆然と様子を眺めていると そのシルエットは突然「真っ黒の凶悪な魔物と化し ゲドに突然襲い掛かってきます」その時学園長が飛んで入ったため 学園長は身を裂かれ死に ゲド自身も瀕死の重傷を負います その後 学園長を死なせてしまった自分を悔い 思うように動かぬ体で 謹慎の思いを抱きながら塔の中で学び続けます 数年の後卒業し 一人前の魔法使いとなって 様々な島に暮らす人々に役に立つために 筏に帆を立てて外海に旅立っていきます もちろん推進力は風の魔法…

ゲドは人々のために良い魔法を使いながら島々を巡りますが はじめは気配で 徐々にそれは実体化し「黒い影」が自分を追い続けていることを知り 必至で逃げながら旅を続けることになります いくら善行を積んでも いくら速く筏を走らせても 影はゲドに襲い掛かろうとします そして物語の終盤 ゲドは影と戦うことを決心します 影を見かけると筏の速度を上げ影を追い続けます …そうすると何故か影の方は襲ってくるのではなくヒョイヒョイと逃げるようなそぶりを見せ始め 1対1の追いかけっこが始まります

そうして とうとう湾に影を追い詰め 杖を握り両手を強く広げて 影の「真名」を叫びます

 

「ゲド!」

 

その瞬間影はゲドの中に入り込み一体の者となり 物語は終わります

 

 

どうして長々とこんなことを私は書いているのでしょう…

それは多分 今ならその意味がある程度分かるからだと思います

影は自分であり 悪も自分であり 最も忌み嫌う存在もまた自分なのだと…

今の私はそう思うのです

世界では 訳の分からないこと 理不尽 不条理 死に満ちています

 

それ等も全て「私自身の影」なのではないかと感じます

 

これを読まれている皆様も名前がおありでしょう…

戸籍謄本に記載されている名前が「真名」かどうかは わかりません

本当は あなた自身の「真名」があるのではないかと思います

 

kei