ホーキング博士によれば「宇宙的時間」「熱力学的時間」「感覚的な時間」等の例を用いて「時間が存在し進んでいる」と考えることができるそうだが それにベクトルのような方向性があるのかないのか 逆行することはあるのか…とかはよく分からないし 光速を超えると発生するといわれる「タイムトラベル」が可能かどうかもわからない
ただ「人は何処にいようが 何をしようが 何を思おうが 喜ぼうが 嘆こうが『時間』の中でそれらを行っていて それは 石や樹木 自然現象 つまり万物にとっても同様で そこから逸脱することは無い」ということなのかもしれない
こうして考えると「存在すること」は時間が必ず付帯しており たとえ一瞬の出来事であっても短い時間の中で起きていることになる
前回「貧富のピラミッド」について記事を載せ 自分で違和感を感じていた
貧富のピラミッドがある限り 人は争いを止めることは無いだろうと思う
何故ならば ピラミッドの頂点を目指す意志と行為そのものが闘争・競争であるからだ
とは言っても 統計結果 研究結果等「結果」と名付けられるものは「反時間的」であり「連続を敢えて切り取った断面」に過ぎない なので少なくとも時間軸の要素は除かれていることになる
時間を盛り込んだピラミッドを考えれば 日本についても このままでは貧富の差は広がっていくだろうと予想される ただしその後はまた何かが生じ 同じ状態ではいられないはずだ 「万物は流転する」とか「盛者必衰」という言葉は「時間が存在している以上 言わずもがなの当たり前の話」なのだ
「私たちは今生きている」と感じるのなら それは自宅の中で生きているだけでなく 職場で生きているというだけでなく 「時間と共に生きいる」わけて それを朝はシャワー 歯磨き洗面 昼何かをし 夜TVを観るといった「ルーティンとしての時間」を生きているのであれば 同じことが二度と生じないという時間の特性から考えると ただの幻想ではないかという気がする
W.Hオーデンのこの詩を 私は少しずつ紐解いていこうと思っているのだろう…
「1939年9月1日」September 1, 1939(壺齋散人訳)
52番街の安酒場で
不安と恐れを抱きながら
俺がひとりで座りこんでいると
低劣でいい加減な10年間が
希望もなしに消え去っていく
怒りと恐怖の感情が
地上のところどころで
波のように渦巻いて
俺たちの生活にまとわりつき
名状しがたい死の匂いが
9月の夜を挑発する
まともな学問なら
ルターから今日に到るまで
文明を狂気に駆り立てた
すべての罪業を明らかにできる
リンツで起きたことを見よ
どんなに巨大な妄想が
異様な神を作り出したことか
どんな生徒たちだって
人に対してなされた悪と
それへの復讐について
学習するようになるものさ
追放の身のトゥキディデスは ※トゥキディデス:紀元前アテネとスパルタの戦い等を記録した『歴史』著者 人間とその集団の行動の源泉が「名誉心」「恐怖心」「利得心」にあるとした
デモクラシーについて何がいえるか
独裁者たちが何をするか
老人たちが墓場にむかって
どんな繰言を繰り返すか
そのことをよく知っていた
その上で歴史書に書き込んだのだ
追い払われた啓蒙運動
習慣を形成することの苦しみ
失敗と痛恨と
人はこれらすべてを甘受せねばならぬと
盲目の摩天楼が
そのすさまじい高度によって
人間の集合的な力を示している
その中立の空の中に
諸民族の言葉が競い合って
空虚な命題を注ぎ込む
だがだれも幸福な夢を
何時までも見続けていられない
鏡の中から現れてくるのは
帝国主義の顔と
国際的な悪行だ
バーに並んだ顔は
平凡な毎日にしがみついている
灯りは消してはならぬ
音楽はいつでもやってなきゃならぬ
何もかもが共謀して
この砦を家具のように
見せかけようとしている
俺たちがいったいどこにいるのか
わからせまいとするかのように
俺たちときては幽霊のいる森の中で迷い
夜を怖がっている子どもみたいだ
戦闘的なたわごとも
重要人物の演説も
俺たちの望みほど粗野じゃない
狂ったニジンスキーが※ニジンスキー:20世紀最高のダンサー・振付師 団長ディアギレフに解雇された
ディアギレフについて語ったことは
普通の人間についてもいえることだ
男と女の骨の髄にまで
染み付いている罪業は
持ち得ないものを熱望することだ
普遍的な愛では満足できずに
自分ひとりだけが愛されることを熱望する
因習の闇から
倫理的な生活へと
おびただしい数の通勤客がやってきて
いつもどおり朝の誓言をする
「今日も女房を大事にして一生懸命働くぞ」
頼りない亭主たちが毎日起きるのは
変り映えのしないゲームをするためさ
だれがこいつらを解放してやれるだろう
だれがつんぼの耳に語りかけられるだろう
だれがおしの口に語らせられるだろう
もつれた嘘を解くために
俺が持っているのはひとつの声だけだ
その嘘はありふれた人間の
脳みそに巣くうロマンティックな嘘だったり
空を手探りする
高層ビルの権威に巣くう嘘だったりする
この世に国家などというものはない
また孤独な人間というものもない
飢えは市民にも警察官にも
わけ隔てなく訪れる
俺たちはお互いに愛し合わねばならぬのだ
宵闇の中で無防備に
世界は昏睡して横たわっている
だが正義がメッセージを交し合うところ
そういうところではいたるところ
点々と光が交差して
まぶしい耀きを放っている
俺もエロスと泥から作られており
同じく否定と絶望に
付きまとわれている限りは
この光の交差のような
肯定の炎を放ってみたいものだ
第二次世界大戦が勃発したその日に書かれたこの詩を通じて 今は考え 色々なものを見ている気がする
kei