kei 「蜘蛛の糸Ⅱ」

2023年3月退職 後の生と死を「絵と言葉」で考えたい…4月からは「画家」か?「肩書を持たないただの人間」として生活していこうと考えています。

「ユーピー教」 P.K.Dick

今 大学では国内外の「新興宗教」にハマる学生さんが増えていると聞きました

なので 「オウム真理教」的な 学生を対象とした新しい宗教が広がる傾向は 今でも変わっていないのだと思います

なぜ新興宗教にハマるのか……?それは人それぞれでしょうし 近親者が突然末期ガンだと宣告された時なども「藁にもすがる思い」になるので このようなタイミングで入信する人もいるでしょう ただ オウムの場合などは「絶対(者)」であるとか「正義」という概念をまるで紙吹雪のように気軽に振り撒いていたのだと思います 「悟り」なんてのも同様でしょうか

私はこれらの言葉を信じることがないので どの宗教にも入信しないと思いますが…

以下の記事は2022年10月01日に書きました「若い人々」と「宗教」について もう一度考えたいと思ったのが 今書こうとしているきっかけです

 

フィリップ.K.ディックのSF小説は20~30代に好んで読みました 「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」は言わずと知れた SF映画の金字塔「ブレードランナー」の原作 他には エントロピーの逆流だったか低下だったか ともかく時間が逆行し 墓から生き返る人が続出するため「墓堀人」という職業があり 歴史に大きな影響を与えた人物の墓堀(=蘇生)人達とそれを阻む者達の葛藤を描いた「逆回りの世界」 ドラッグを重要アイテムとして用いた「ユービック」 あと「流れよ我が涙と警官は言った」も読みごたえがありました 短編「パーキーパットの日」や「ユービック」だったか…火星に移住した人々は暇なので ドラッグを使い近所で親しくしている2組の夫婦が「パーキーパット人形遊び」をします パーキーパットはバービー人形如きものに過ぎないのですが ドラッグを使用しているため 動かす人のパーソナリティーがダイレクトに投影されるわけです 高額で取引される 精緻を極めたリアルなミニチュアの専用の家 専用の家具調度 専用の車といったミニチュア世界で 2組の夫婦の2人の男女は パートナーではなく交差(不倫)関係で恋愛に及んでしまう 

このようにヴァーチャル⇒リアルで現在起きていることは 相当の確率でディックは当てています このことは以前も書きましたっけ…
ディック没前に書かれた「ヴァリス」や「聖なる侵入」も持っていましたが 難解で途中であきらめてしまいました それはおそらく作品に「宗教色」を感じたからだと思われ 実際ディックは様々な宗教を学び「グノーシス主義」に傾倒していったらしいです
ともあれ 傾倒する前から宗教を物語に組み込む作品はあり 私が記憶に残っているのは「ユーピー教」という彼独自の宗教です。

これは ブレードランナーの原作となった例の文庫本の表紙ですが 注目は羊の方ではなく 羊の夢 つまりブラウン管の中の映像

シルクハット黒いコートと やや陰鬱な服装の初老の男が岩だらけの山道を背を向けたまま トボトボと登っていく 歩いているうちに 様々な方向から「石」が男に投げこまれぶつけられる 当てられるとその衝撃と痛みで倒れそうになる けれども また立ち上がり 振り返ることなく登り続ける

ただただ この無言の動画が延々と続く これがユーピー教の教義であり 全てです

そこに言葉は一切出てきません

それを見ながらドラッグをやっているわけなので まるで自分が男自身になったような幻覚に見舞われるのでしょう ディックらしいユニークな宗教だなぁ。と私は感じます

仏教国タイで マリファナが(条件付き)解禁 となったと知人から聞いて少し驚きました 
ただマリファナには幻覚作用は無いと思うので ディックの描いた世界は見られないと思います

 

kei