kei 「蜘蛛の糸Ⅱ」

2023年3月退職 後の生と死を「絵と言葉」で考えたい…4月からは「画家」か?「肩書を持たないただの人間」として生活していこうと考えています。

「マリリン」

マリリン・モンロー  Billy Joelの歌にも出てきた

私の深層心理領域では理想の女性なのか? よくわからないが

3度目の結婚相手であった作家アーサー・ミラーは彼女と結婚している間

全く創作できなかった というのは有名な話

・・・ともかく

20代前半 彼女に関わる本・映画・詩に触れた


本は曽野綾子著「砂糖菓子が壊れるとき」 彼女の死因の推理を交えた物語

 

映画は「マリリンとアインシュタイン」 アメリカ亡命中のアインシュタイン博士のもとに撮影中逃げ出してきた 例の白のホルターネックのドレス(調べた)姿のマリリンが訪れる

マリリンは半ば酔っぱらいながら「私をバカ女だと思ってる?」とアインシュタインに尋ねる その直後 風船と自動車模型をつかって彼女は「特殊相対性理論」を説明し始める アインシュタインは「合っている」と答える

アインシュタインの目に 広島・長崎に落とされた原爆のイメージが浮かび上がり

その爆風によってマリリンは白骨化すると同時に吹き飛び崩壊する・・・

印象的な映画だった


そして詩は  やはり「大岡  信」だろうか  傑作と名高い


マリリン



そこからフィルムが
あらためて逆転してくる

*

彼女の眼の放物線は
もう夢の結晶する森にとどかない
霧のような死の炎がベッドを乗せて運ぶさきには
優しい白い象が待っているのか
閉ざされた船の窓が待っているのか
体じゅうの毛をおとなしくそよがせて
彼女は暗い鏡の上に
洗濯板となって横たわる
鏡の底に
メスが突立つ
だが魂の真実は
メスではさわれない

*

歴史の透明なサングラスの下では
八月の灼けつく丘は
すべてカルヴァリオの丘であろう
マリリンに茨のありかをきくな
・・・・・・
君たちは
自伝の中にしるすな
マリリンの名を
彼女の死の中に
君らのすべては
すでに書かれている

*

いまは
ひとしずくの涙だけが
すべてを語りうる時代だ
裸の死体が語る言葉を
そよぐ毛髪ほどにも正確に
語りうる文字はないだろう
文字は死の上澄みをすくって
ぷるぷる震える詩のプリンを作るだけだ

*

彼女の両眼は陥没し
湖水となる
・・・・・・
見渡すかぎり水面を覆い
ただよっている
フィルムの屑
その散乱する乱反射が
血友病のハリウッドを
夜空に浮かびあがらせる
ほんとうの血を流して死ぬには
はだかで横たわらねばならなかった

*

マリリン
君の魂は世界よりも騒がしく不安で
エビのひげより臆病で
世の女たちの鑑だった
・・・・・・
君が眠りと眼覚めのあわいで
大きな回転ドアに入ったきり
二度と姿を見せないので
ドアのむこうとこちらとで
とてもたくさんの鬼ごっこが流行った
とてもたくさんの鬼ごっこが流行ったので
君はほんとに優しい鬼になってしまい
二度と姿を見せることが
できなくなった
そしてすべての詩は蒼ざめ
すべての涙もろい国は
蒼白な村になって
ひそかに窓を濡らさねばならなかった

*

マリリン
マリーン

ブルー

 

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